【寓話で学ぶガバナンス】シリーズとは?
森の仲間たちが経営する「モリモリ商会」を舞台に、フクロウ監査役と共に“会社の気になること”を考えていくシリーズです。ガバナンスの知識を、物語のようにやさしく学べる内容です。
――この森の奥で、モリモリ商会が創業したのは、もう10年も前のこと。
今日もフクロウ監査役が、会社のあちこちで起こる“気になること”を見つけては、そっと耳をすませています。

いや〜、今回もちゃんと出席できてよかったよ!
取締役会が終わると、アライグマ取締役がにこやかにそう言った。
今回も彼は、終始笑顔でうなずくだけ。各議題には「異論ありません」と短く返すだけだった。



さすが出席率100%だな
キツネ社長が軽く肩をたたくと、アライグマは胸を張って笑った。
会議では、新しい物流センターの統廃合案が提示された。
資料にはコスト削減の試算と、現場オペレーションへの影響が詳細に記されていたが――誰も、それについては何も言わなかった。
数時間後、コピー室で資料を仕分けしていたリス取締役が、フクロウ監査役に話しかけた。



……実は、あの資料、途中でリスクの数値が食い違っていて……



ほう。それは気になるね



でも、誰からも指摘がなくて……。アライグマさん、きっと読んでなかったんだと思います。
あの方、着任からずっと発言ゼロですし
フクロウはうなずいた。そして翌日、アライグマの執務室を訪ねた。



物流案について、なにか気になった点はありましたか?



ん? いやいや、私は社長の判断を全面的に信頼してるから。
出席して、必要なら賛成すればいい。そんな感じでやってきたしね



なるほど。ちなみに、資料の6ページと8ページで数字が食い違っていたのですが――



え? あ、そうなんだ? ……まぁ、大したことじゃないでしょ?
フクロウは黙ってメガネを直した。
その夜、監査役室のランプの下で、彼はそっと記録を残した。 会議に“いたか”ではなく、会議に“関わったか”――
責任とは、その違いを自らに問う力なのだ。
■ 「出席しているだけ」の社外役員にご注意を
ガバナンス体制が整っているように見えても、社外役員が実質的に関与していない場合、“形だけ”の監督機能に陥ってしまいます。発言も提案もなく、資料の読み込みも不十分なまま「異論なし」と繰り返すだけでは、会社の未来に責任を持つ立場とは言えません。
■ 出席=関与ではない
社外取締役・監査役は、会議に「出ているか」ではなく、「どう関与しているか」が問われます。
出席率よりも、議論への参加・意見表明・事前の資料精査など、意思決定に対する実効性ある貢献が本質です。
■ フォローすべき兆候とは
・発言のない役員が複数回続いている
・リスク議題で誰も意見を出さない
・「任せてるから」が常套句になっている
こうした状態が見られる場合、会議体の実効性を監査役として再点検するタイミングかもしれません。



